【目的】心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション(ABL)治療にダビガトランエテキシラート(DE)を投与する場合、出血性合併症の考慮が必要である。DEの大規模臨床試験(RE-LY試験)では、ABL患者は除外されたため、そのデータをABL治療に適用できるか否かは不明である。前報では、ABL予定患者146名を対象にDE投与による出血リスクを検討し、RE-LY試験の出血リスクに関する除外基準(ABL以外)が、ABL患者でのDEによる出血事象の発現予測にも適用できる可能性を明らかにした。今回、対象患者を追加して検証した。
【方法】筑波大学附属病院(本院)において、2014年4月~2021年3月にDEを投与したABL予定患者496名(男/女:394/102、年齢63.4±10.7歳、体重67.7±11.9kg)を対象とした。既往歴、現病歴、各種検査値、併用薬剤、CHADS2スコア、投与中の出血事象を調査し、RE-LY試験の選択及びABL以外の除外基準(人工心臓弁膜患者等、脳卒中発現、出血リスクが高い、重度の腎機能障害、肝疾患併発、貧血、ワルファリン治療禁忌、可逆性疾患原因のAF患者、感染性心内膜炎併発)との関連を検討した。
【結果・考察】ABL患者の平均年齢はRE-LY試験よりも低く(63.4 vs. 71.5歳)、CHADS2スコア0-1の割合はRE-LY試験よりも高く(75.6 vs. 32.2%)、選択基準に合致した割合は44.6%であった。DE投与量は、RE-LY試験での高用量群に相当した(3.49 vs. 3.64mg/kg/日)。出血事象は72名(14.5%)にみられ、そのうち大出血は20名(4.0%)であり、いずれもRE-LY試験(32.5%、6.2%)より低かった。ABL以外の除外基準に該当した32名中14名に出血事象がみられた。除外基準のうち、出血リスクが高い(外科的手術の予定、頭蓋内出血の既往、消化管出血発現、出血性疾患、AF以外の抗凝固療法適応疾患、悪性腫瘍等)に該当した16名中8名に出血事象(うち大出血6名)がみられ、貧血に該当した7名中4名に出血事象(うち大出血2名)がみられた。出血事象がみられた72名は、脳梗塞等の既往、糖尿病/高血圧合併が高い傾向にあり、23名はアミオダロンを併用していた。
【結論】ABL患者は、RE-LY試験と比較してDE投与による出血事象の発現リスクは低いが、RE-LY試験の出血リスクや貧血に関する除外基準は、DEによる出血事象の予測にも適用できると考えられた。除外基準以外の背景要因としてCHADS2スコア、アミオダロン併用の影響が考えられた。