【背景・目的】非弁膜症性心房細動(NVAF)の治療に使われる直接経口抗凝固薬(DOAC)は従来療法のワルファリンに比べ、さまざまなメリットから広く臨床で使用されるようになった。また開発段階におけるランダム化比較試験から各DOACはワルファリンに比べて有効性及び安全性は同等または優れていると報告されているが、DOAC間で直接比較した研究はほとんどなく、有効性と安全性の観点から最初の選択肢にどの薬剤を推奨すべきか判断することは難しい。本研究では日本の実臨床を反映したデータのナショナルレセプトデータベース(NDB)を用いて、NVAF患者についてDOAC間で直接比較し、評価することを目的とした。【方法】NDB の処方データから2016年3月から2019年2月の間にDOAC(ダビガトラン,アピキサバン,リバーロキサバン,エドキサバン)の初回処方記録があり、初回処方前にNVAFの記録がある20歳以上の患者を抽出し、解析対象とした。各DOACの組み合わせから6つのデータセットを作成し、それぞれ逆確率重みづけ(IPW)を用いて、2群間の患者背景を調整した。調整後、COX比例ハザードモデルを用いて、出血および脳卒中のリスクを評価した。未測定交絡因子である腎機能を評価するため、ネガティブコントロールアウトカム (NCO)として腎性貧血も同様に解析を行った。【結果・考察】NVAF患者例(ダビガトラン: 22,563例、リバーロキサバン:104,584例、アピキサバン: 124,666例、エドキサバン:128,756例)が解析対象となった。COX比例ハザードモデルの結果から、出血において、ダビガトランはリバーロキサバン(0.91,95%CI:0.9-0.92)、アピキサバン(0.94,95%CI:0.93-0.95)、エドキサバン(0.92,95%CI:0.91-0.93)に対して、有意にリスクが上昇した。また脳卒中においても、ダビガトランはリバーロキサバン(0.85,95%CI:0.83-0.87)、エドキサバン(0.85,95%CI:0.83-0.86) に対して、有意にリスクが上昇した。ダビガトラン以外の薬剤間の組み合わせでは、有意な差がみられる組み合わせもあったが、NCOの結果より未測定交絡因子である腎機能の影響が関与している可能性が示唆されるため、有効性と安全性に差はないと考えられる。【結論】今回の研究では、有効性・安全性についてDOAC間の直接的な比較を行った。未測定交絡因子である腎機能の程度を考慮した場合でもダビガトランは有効性・安全性において他の薬剤と比較して有意にリスクが上昇することが示唆された。