【目的】レボドパ・カルビドパ経腸療法(Levodopa-carbidopa intestinal gel:以下LCIG療法)は,進行期パーキンソン病患者におけるデバイス治療の一つである.胃瘻から空腸まで挿入したチューブより,レボドパ・カルビドパ製剤を直接空腸に持続的に投与することで、安定したレボドパ血中濃度を得られる.レボドパは末梢においてCOMTに代謝され,3-O-メチルドパ(以下3-OMD)となる.そのためCOMT阻害薬の併用により効率的な中枢移行を促すことができると考えられている.今回,LCIG患者において,COMT阻害薬であるオピカポンを併用した場合,レボドパおよび3-OMD血中濃度に及ぼす影響を検討した.【方法】当院でLCIG療法中のパーキンソン病患者1名(53歳,男性)において,オピカポン25mgの併用前後でレボドパおよび3-OMDの血中濃度測定を行った.採血は8:00-16:00まで8時間,合計13回実施し,LCIG接続前に1回,開始後1時間は15分毎,1-2時間は30分毎,その後は1時間毎に採血を行った.【結果・考察】入院時のLCIG設定は,朝投与量10ml,維持投与量3.8ml/h,追加投与量2mlだった.追加投与は4-5回/日あり,ジスキネジアはほとんど認めなかった.オピカポン併用前後で血中濃度測定を行い,AUCを比較したところ,レボドパは約1.6倍,3-OMDは約0.2倍になった.併用後,追加投与回数は1回/日まで減少したがジスキネジアが増悪した.そのため,維持投与量を2.5ml/hに減量し,血中濃度測定を行った。レボドパ血中濃度はオピカポン併用前まで戻ったが,追加投与の回数は減少したまま維持され,軽度のジスキネジアは持続した.【結論】LCIG患者にオピカポンを使用することにより,3-OMD血中濃度は減少し,レボドパ血中濃度は上昇した.COMT阻害薬による3-OMDの減少により,レボドパの中枢移行が増加し,レボドパ使用量の減少につながったと考えられるが,ジスキネジアも増加したため,維持投与量の調整を必要とした.