【背景・目的】
食生活の欧米化の影響により食物繊維の摂取量が減少している。食物繊維の摂取不足は炎症性腸疾患などの増悪のほか、糖尿病、肥満、心血管疾患などの生活習慣病に発症リスクとなることが種々の研究で示唆されているが、肝臓への影響についてはほとんど報告がない。本研究では、食物繊維摂取欠乏が肝臓の脂肪蓄積へ及ぼす影響について検討した。
【方法】
8~10週齢のC57BL/6Jの雄性マウスを2群に分け、標準飼料食(ND群)、食物繊維を含まない飼料(FFD群)を用いて14日間飼育し、飼育期間中の体重、摂餌量を測定した。肝臓への影響を評価するため、Day14に肝組織を採取し、重量の測定ならびに肝臓1g当たりのトリグリセライド(TG)量およびコレステロール量の定量を行った。また、精巣上体周囲脂肪の重量測定を行い、肝臓外の脂肪蓄積への影響についても併せて検討した。
【結果・考察】
摂餌開始から14日目までの各個体の体重増加率はND群とFFD群間で有意な差は認められなかった。また、両群における実験期間中の摂餌量に差はなかった。したがって、本検討の実験期間では、食物繊維の欠乏は体重の増減に影響しないことが示された。しかし、肝臓重量はFFD群においてやや低値を認めた(p<0.05)。また、肝臓組織中のTG量はFFD群において高値を示した(p<0.01)。これに対し、肝臓組織中のコレステロール量は両群間で有意な差を認めなかった。これらの結果から、食物繊維欠乏食は肝臓におけるTGの合成あるいは代謝に影響を与えている可能性が示唆された。また、精巣上体周囲脂肪の重量には有意差がなかったが、FFD群で増加する傾向が認められた。
【結論】
食物繊維の欠乏は肝臓におけるコレステロールの代謝や合成には影響を及ぼす可能性は低いが、肝臓中のTGを増加させ、脂肪肝のリスクを高める可能性が示唆された。