ICH E6(R2)では、臨床試験の従来の品質管理及び品質保証を包括する「品質マネジメント」の概念が明確にされ、Sponsorの責務として「臨床試験の全ての過程」において品質をマネジメントするためのシステム(Quality Management System、QMS)の構築と、QMSにはRisk based Approach(RBA)を取り入れることが奨励された。この取り組みは臨床試験の全ての過程が適用範囲となるため、SponsorによるQMSの構築だけで質を確保することは困難であり、データの起点となる医療機関と一体となり質を作り込むことが重要となる。
またICH E8(R1)(Step4)では、臨床試験の質を試験計画及び実施手順の中に設計することで質の積極的な向上を目指すQuality by Design(QbD)の考え方が示された。これは質の管理技術を置き換える考え方ではなく、計画及び手順で質が管理されることを前提とした考え方となる。つまりSponsorがQbDに取り組むためには、ICH E6(R2)で求められているQMSの構築が前提となり、Sponsorと医療機関を始めとする全てのステークホルダーの協力が重要となる。
日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会では、QbDとRisk proportionate Approach(RPA)の考え方に基づき、一貫した質のマネジメントを実装するための方策を継続して検討している。
2021年8月に「今日から始める!医療機関で行うプロセス管理」をwebsiteに公開した。医療機関がプロセス管理を行う上での望ましい姿をRisk ManagementとIssue Managementからなる“9つのステップ”を方法論として提案し、治験依頼者の果たすべき役割についても提言した。
2022年x月には、医療機関のプロセス管理を考慮したモニタリングに対する行動変容を促す目的で、RBAのモニタリング(RBM)を行う際にプロセスに焦点を当てる考え方を検討し、臨床評価部会内で公開した。
2022年度は医療機関によるプロセス管理とSponsor によるQMS・RBMがQbDとRPAの考え方に基づき一貫して行われることを目的とし、実施計画の設計段階でどのようにQbD・RPAに取り組むことができるのか、特に実施可能性の観点で検討している。
今後は ICH E8(R1)(Step4)で述べられている、患者・市民、医療機関などのステークホルダーを巻き込んだ実施計画の設計や、Sponsor、医療機関の協働により、臨床試験の目的に適したデータの質を確保できる、国際競争力の高い臨床試験実施環境の構築を実現させたいと考えている。