アカデミアと創薬の話題となると、一般的にはアカデミアが持つシーズを製薬企業がどのように実用化に向けて検討するかということや医師主導治験が話題の中心になりがちである。一方、企業治験をアカデミアでどのように行われるべきなのかについて語られることは乏しい。実際、精神科領域で企業治験が行われる場合、医学専門家や治験調整医師はアカデミアが中心となっているものの、pivotal trial(主にphase III)において、実施医療機関として大学病院が参画している割合は10-15%に満たないのではないだろうか。この理由としては、精神科単科病院などと比較すると、精神科救急病棟を持つ施設が少なく、絶対的な精神科病床数や緊急対応が可能な保護室数が少ないといった施設的問題により、急性期患者を対象とした試験が行いにくいことが影響しているのではないだろうか。しかし、アカデミアの附属病院に受診する患者は、一般の診療所や病院に来院する患者と比較し、研究や治験への参加に親和性が高い患者も多い印象がある。今回の講演ではこのような精神科領域のアカデミアにおける企業治験の実情について概観し、今後より良い形でアカデミアにおいて企業治験を行う上で解決すべき問題は何かについて私見を交えて考察したい。