2013年に始めた「臨床薬理学としてのファーマコメトリクス」そして「ファーマコメトリクスのさらなる展開」として続けているセッションでは、「ファーマコメトリクスは合理的な薬物治療のための巨大な哲学と考えられる一方、患者個別の用量設定を目指す日本の臨床薬理学界における取り上げられ方、活用のされ方が少なすぎる」との問題提起に起点を置き、医療現場と企業とを結ぶツールである「ファーマコメトリクス」活用による産学協働を推進させる重要性とその意義を発信してきた。
「ファーマコメトリクス」を活用した産学連携の成功事例を一般化・拡大するため、医療側は(個別化処方の設計のため)の現場“ニーズ”の発信をどう行い、企業側はその現場“ニーズ”にどう応えていくべきなのか討議した結果、産学有志による(「JSCPTサロン」と命名のコンソーシアム=即ち「臨床薬理学の観点から、上市後臨床現場で得られた情報に基づく臨床薬理知見更新のため、産学協働研究の是非に科学的助言を与える専門家集団」の設立と学会における具体的な運営の実際を昨年の本セッションで提案した。今回は、いよいよその試行第1回として、小児PAH治療のためのPDE5阻害剤の用量設定における事例を題材として、サロン議論を展開したい。ここでは議論の前に鍵となる論点の整理を行う。