【目的】新型コロナウィルス(COVID-19)の感染が継続しており、医学教育の現場においてもこれまでのような対面型の講義・実習を行うのが難しくなっているという状況がある。もともと薬理学教育においては諸事情により、動物を使った実習を減らす傾向がみられていたが、今回のコロナウイルス蔓延によってその動きにより一層拍車がかかることになった。そこで我々は非対面型のシミュレーターを用いた薬理学実習の可能性とその有用性について検討を試みた。【方法・手法】これまでに我々が企業と共同で開発したタブレット型実習シミュレーター「Pharmaco-PICOS」と、現在開発中の3DゴーグルタイプVRシミュレーターを薬理学学生実習に使用してその有用性を検討した。また、実習に参加した学生にアンケートを実施し、その評価についても検討した。【結果・考察】タブレット型実習シミュレーターはCloudシステムにアクセスすることにより、オンラインによる遠隔で同時に複数の学生がシミュレーション実習を行うことが可能である。また、各個人に対してランダムに異なった課題を与えることによりマンネリ化を防ぐことも期待できる。今回の我々の実習でもCloudシステムによるオンライン実習を実施したが、コロナ感染が下火になっていた時期であったため、完全に学生が自宅で実習を行うところまでは検証しなかった。しかしながら学生による感想などを考慮すると、理論上は自宅でも自主的な実習を行うことは可能であると考えられ、ある程度の有用性はあると思われる。 一方の3DVRシミュレーターでは、学生に対して使用法を教える必要が生じたため、対面型の実習を行った。3DVRシミュレーターは学生の評価は非常に高かったが、一方で完全オンライン実習を行うには、現在のシステムをより一層改良する必要があることも明らかになった。今後はさらなる検討と改良を加えて、よりよい薬理学実習を行える体制を考えていく予定である