臨床研究の実施にあたっては、その前提として各種法令の順守が必要である。この点については、日本では、治験については「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、特定臨床研究については「臨床研究法」、観察研究等については「ヒトを対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」と該当する法令が複雑であり、正確な知識が求められる。また、臨床研究は人を対象とした研究であることから、ヘルシンキ宣言に基づく倫理性の担保と研究の科学的な妥当性の確保は不可欠である。さらに、臨床研究実施の現場においては、単にルールを守るだけでなく、被験者の安全確保を最優先に考慮するのみならず、被験者が感じる不安や不都合を解消するための取り組みも重要である。このように、臨床研究に携わる人材には、多方面にわたる専門知識を正確に把握していることのみならず、被験者に寄り添う心構えも必要であり、専門職としてその知識や技能を継続的にぷラッシュアップしていくことが期待される。厚生労働省としても、臨床研究中核病院による各種研修事業を実施するなどの取り組みを進めているが、改めて臨床研究に携わる人材に期待する知識や心構えと、人材の育成に向けた対策について考察する。