臨床研究/臨床試験の立案から計画、施行に至る過程に必要とされる知識と技能は幅広く、支援にあたるスタッフ個人がその全てを網羅することは不可能である。一方で臨床試験コーディネーター(CRC)は臨床試験における実務支援者として幅広い業務の実行を求められてきた歴史がある。その中で私たちはCRCをはじめとする実務担当者の行き着く先はどこにあるのかを問い続けてきた。本学会では臨床試験に携わるものの将来のあり方を考えるひとつのアプローチとして臨床研究専門職認定制度を検討してきた。演者は臨床試験を自ら施行するとともに研究者の支援も多く行ってきたが、多岐にわたる試験の状況を考えると、認定制度は単なる熟練度による段位認定のようなものではなく、それぞれの背景と技能に応じた分野ごとの認定が望ましいと思われる。臨床薬理学、臨床医学各論などの基礎的な知識をもった上で、計画立案の上で実務的な議論、施行における問題点の抽出、実際の施行と取りまとめなどが、それぞれの立場から可能な人材が求められる。ひとりがスーパーマンになる必要はなく、それぞれの分野のプロがチームとなってひとつのプロジェクトを進めていくイメージである。このイメージを踏まえて私は本制度の議論の中で臨床研究専門職は自分の特技を宣言するものであるべきだと述べてきた。単なるCRCの上級版でなく、多くの専門職に開かれた制度であるべきだと考えるからである。事務局業務のエキスパート、FIH試験立案のエキスパート、医師主導治験調整のエキスパート、被験者保護のエキスパートなどもあってよい。基本を身につけたそれぞれのエキスパートが支援部門に配置され、誇りをもって仕事をしている未来を考えるとわくわくする。部門の管理者としてはこれらの有資格者に対しては業務の評価、手当てなどで報いるべきだと感じるし、施設長へ実現に向けたな働きかけを行うべきであると思っている。この制度が一定の評価を受け、地位向上に役に立つまでには時間を要するであろうが、それを実現させるのは認定する学会と認定される専門職の双方の努力にかかっている。