質の高い臨床試験・臨床研究をより多く実施するにはQuality Management(QM)の推進が必須である。高い質とは研究の目的に適合(Fitness for purpose)していることである。QMはその実現のため、Risk Based Approach(RBA)により、品質管理(QC)/品質保証(QA)を効果的に活用し、円滑かつ効率的な研究を実施することにある。QMの運用のため、医療機関におけるプロセスへの質の作り込み(Built-in Quality)が求められている。また、医師主導治験や研究者主導臨床試験でのRBAの実装による質の設計(Quality by Design)が進められている。一方、限られたリソースで迅速に研究を完結することも益々必要となってきている。研究の成果が社会に与える影響と実状に合ったSystem(QMS)を構築していくことが課題と考える。
本制度の検討において、専門職にはQMを推進する能力をそなえることが示された。QMは研究に関わるすべての専門職による体系的な活動とされたと言える。特に「データマネジメント」および「モニタリング」の能力は、RBAの実装が条件とされる。具体的には、RBAの手法を研究者に助言し、研究に求められる質に適した計画を作成、施設スタッフにトレーニングし、実施した活動を評価して調整や改善をできることである。すなわち、QMSの構築へ主体的に貢献する役割があることを意味する。また、「疫学」に関する能力は、実施しようとする研究のデザインと設定理由を説明でき、エンドポイントや対象集団についてその内容と設定根拠を理解し、研究者と科学性・倫理性に配慮した討論を行い、適切な提案ができることとされる。これらは本制度の狙いである、研究者の計画および実施に伴走する者としての要件であるが、研究の目的に適合したQMの手法を検討するために必要な技能である。
QMSの構築は暗黙知を見える化して形式知にするとも言える。担当者として業務の経験を積むことでリスク低減策を会得し、緻密な準備(予防)とチェックプロセスを導入するようになる。QMはそれを研究チームで共有し、重要性に見合った質を確保することにある。共有することで形式知となり、さらにはデジタル化が実現できDXへとつながる。状況に応じて素早く行動する機敏さが重視され、「協働」から「共創」により価値を創出する時代となってきて、専門職には変革が求められている。本制度が日本の臨床研究の課題を解決する仕組み創りに貢献することを期待したい。