医薬品企業治験の国際調和を目的とした新GCP(当時)が施行された1998年以降、本邦では、企業治験を主眼とした治験活性化計画が実施された。GCPを準拠した治験の実施と被験者保護の観点でCRCの役割が注目され、その後の、国際共同治験の増加、EDC(Electrical Data Capture)やリスクベースドモニタリングの導入など、企業治験の実施環境の変化にも適用し、重要な役割を果たしてきた。
一方、臨床研究・治験活性化5か年計画2012では、アカデミア研究を推進するための基盤整備が重点事項となり、医師主導治験関連通知の見直しによる医師主導治験数の増加、医療法の改正による臨床研究中核病院の認定開始、ディオバン事件をきっかけとした臨床研究法の施行など、アカデミア研究の環境が大きく変化した。この国内の臨床研究の転換期において、求められる臨床研究専門職の役割は、個別研究における研究計画書の立案・策定から研究結果のとりまとめに至る一連のプロセスを守備範囲として、スタディマネジャー、モニター、データマネジメントの役割などに大きく展開した。とくに、新規の医療製品や医療技術の実用化を目的とした治験や臨床研究においては、より高度な専門性が求められる。
さらに、革新的な臨床研究の推進の一方で、研究の価値や信頼性は、研究公正や関連規制の遵守が前提となるため、研究機関としての適正実施支援という役割も注目されている。また、個別研究へのアサインによらず、多様な研究相談への対応(コンサルテーション)など、研究支援体制の充実化を図ることも重要である。しかし、これらの活動を示す役割としての名称はなく、重要性の認知にもつながっていない。
よりよい医療のためのエビデンス創出という臨床研究の使命と被験者保護を基本とするCRC業務の経験者が、その経験を活かして新たな活動をするにあたり、その役割を認定する制度は、CRCからステップアップしたキャリアプランに位置づけられる。また、この制度により、臨床研究における多様な役割の認知と人材確保の必要性の高まりは、CRCの新たな活動へのチャレンジを後押しできるものと期待する。