小児用の医薬品は、安全性や有効性の評価が難しいため臨床試験の実施件数が少なく、結果として医薬品に関する情報が十分ではないという問題がある。また、未承認薬・適応外使用薬の使用実態を明らかにしたうえで、小児医薬品を安全に使用できる環境を整えることも重要である。
平成24年(2012)年に厚生労働省が国立成育医療研究センターに設置した「小児医療情報収集システム事務局」では、「小児と薬情報取集ネットワーク整備事業」を通じて、小児医療情報収集システム(「本システム」という)を構築し、全国の小児医療機関から問診情報及び診療情報を収集することにより小児に特化した医療情報データベースを運用しており、令和4(2022)年3月末時点で約71万人分の医療情報を集積している。 また、平成29(2017)年度より「小児を対象とした医薬品の使用環境改善事業」を開始し、本システムにて集積した医療情報を利活用することによって得られた小児領域の未承認薬・適応外使用薬等の使用実態や安全性に関する解析情報等を小児医薬品適正使用検討会へ提供し、小児医薬品の安全対策向上や小児医薬品の開発推進に役立てることを目的に活動している。
医療情報データベースは近年リアルワールドデータ(以下、「RWD」という)と呼ばれ、多岐にわたる利活用用途が提案され、医療の諸問題の解決や改善に貢献することが期待される情報リソースとして脚光をあびている。しかしながら、その利活用実態においては課題も多く、それらの課題を解決しながら、利活用事例や実績を蓄積していく必要がある。
本システムを用いて、いかに小児の医療情報を収集し、小児医薬品の安全性情報としてその解析結果を発信しているのかについて紹介するとともに、国内でアクセスできる各種RWDの特徴や性質を比較することによりRWDへの理解を深め、医療情報データベースを利活用した小児医薬品の安全性情報収集における期待と現実、そして課題と展望について共有する。