1999年度の厚生省班研究報告で、小児へ処方される薬の7割が適応外使用という実態が報告されて、広くその問題が認識されてから20余年が経過した。海外での小児適応外使用解決のための施策も、新生児領域においては充分な効果をあげていない。今回は、本邦の新生児領域での各種薬剤の開発経緯について述べる。
未熟性に基づく新生児疾患の多くは小児・成人領域とは異なった病態・疾患で、緊急性・重篤性が高い疾患が多い。未熟児無呼吸発作について、1998年厚生省の特定共同指導で「未熟児の無呼吸発作に対するアミノフィリンの使用は適応がなく、不適切である」という指導があったことと、ドキサプラム塩酸塩水和物が早産児への未熟児無呼吸発作に対して「禁忌」となったことが新生児適応外薬の問題へ取り組む端緒となった。この未熟児無呼吸発作に対する治療薬では、アミノフィリン水和物注射液・テオフィリン液が公知申請で2004年に承認後、薬価収載に2006年までかかった経緯もある。その後、「第3回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て、カフェインクエン酸塩の静注・経口製剤が2011年から使用されている。
新生児けいれんに対しては、海外では今なお適応のある抗けいれん薬はない。本邦では医師主導治験が実施され、2008 年に静注用フェノバルビタール製剤が承認された。
未熟児動脈管開存症については、インドメタシンなどのNSAIDsの経口剤などによる治療が行われていたが、1994年インドメタシン静注薬が輸入承認され、その後より安全性が高いとされるイブプロフェン L-リシン静注製剤が「第12回医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て2018年に承認された。また、腎障害などが少なくより安全性の高い可能性のあるアセトアミノフェン製剤の臨床試験が現在企画されている。
新規に薬剤が開発される際に、治験への新生児を組込むと、承認に時間がかかり、有効で安全な薬がなかなか上市されないジレンマがある。例えば、鎮静薬であるデクスメデトミジンでは治験に新生児は組入れられず、新生児への用法用量を含めた記載がないまま、有効である故に新生児で使用されている。そして、安全性情報について適切に情報が収集されることなく、いつまでも適応外使用が続けられる実態がある。
このような経過や実態を踏まえ、より安全に有効な薬剤を新生児へ届けるために、具体的な提言をしていきたい。