長崎大学病院の研究倫理審査委員会(以下、「当委員会」)は、2015年にForum of Ethical Review Committee in Asia and West-Pasific(アジア西太平洋地域倫理審査委員会フォーラム、FERCAP)の認証を取得し、2018年及び2022年にその更新をされている。FERCAPでは世界保健機関(WHO)が2001年に始めた倫理審査能力強化プログラム(Strategic Initiative for Developing Capacity in Ethical Review)に呼応する形で、継続的に倫理委員会認証制度を運営しており、これまでに韓国、中国、台湾、タイ、インド、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどのの200以上の倫理審査委員会を認証してきている。
この認証を受けて得られたことについて、情報共有を行いたい。
2014年当時、当委員会の運営には、審査の効率および申請資料の質の点で大きな問題があり、年12回の開催において、毎回4~5時間に及ぶ審議を行いながら、委員の熱意が十分な結果に繋がっていない状況であった。そこで、外部の評価を受けて、自己改革の動機とすることを計画した。当時、国内には倫理審査委員会の認証制度はなかったが、外国の制度はいくつか存在し、受審することにもっとも実行可能性が高いのがFERCAPの認証制度であった。
準備のためのメールのやりとりがあった後、2015年3月、3名の審査官による3日間の現地調査を受けた。調査3日目午後には、47項目にわたる改善勧告がとりまとめられた。これに対して改善の行動計画を作成し、同年9月認証できるとの回答を得た。
認証を受けることによって、当委員会の一連のプロセスを徹底して自己点検する機会を得られたこと、また第三者からの中立的・専門的意見を勧告として提示されたことで、改善に向けて強いモチベーションを持つことができたことが、FERCAPの認証を受けた意義であった。
なお、2014年度には厚生労働省の研究倫理審査委員会の認定事業も始まり、当委員会はその審査も受審して、2015年3月に全国で9委員会認定されたうちのひとつとなった。厚生労働省からAMEDに引き継がれた認定事業は臨床研究法の施行に伴い終了したので、現在は、国内には認証制度は存在しない状態となっている。