阪大病院は約5年前からAAHRPPの認証に向けて準備してきており、今年9月サイトビジット(コロナ禍のためweb上で実施)を受ける予定である。AAHRPPは、米国221施設、台湾12施設、韓国8施設、中国6施設が認証を受けているが、まだ日本には認証を受けた施設がない。受審の過程で、改めて感じていることは、日本の規制やIRBの縦割り構造は海外に説明困難であること、日本の臨床研究用語の英訳に苦労していることである。つまり、この点においても、国際基準から置いてけぼりになっているように思う。AAHRPPの特徴は、IRBを認証するのではなく、被験者保護プログラム(HRPP)を評価し、IRBを含む施設をまるごと認証すること、国が認証するのではなく、NPO団体が認証することである。臨床研究対象者の保護は、IRBだけで達成されるものではなく、実施施設全体の取り組みが必要であるという考えが、そこにはあるように思う。AAHRPPでは、ドメインI 組織は27エレメント、ドメインII IRBは26エレメント、ドメインIII 研究者および11エレメントの計64エレメントから成る要件を満たすことを求められ、関連する規程やSOPを提出した上、それが実際に実施されているかを確認するため個人あるいはグループ面談が16時間にわたって実施される。被験者保護プログラムは各施設で構築を求められるが、阪大病院では、組織計画を中核に据え、HRPP遵守、リソース、教育プログラム、アウトリーチ活動と臨床研究相談窓口、IRB、他施設連携、医療提供と補償、契約と研究資金、試験薬・試験機器管理、利益相反管理を柱とした。この受審では、ポリシーやSOPの考え方、IRBの権限のあり方、規制と被験者保護の関係等について、日本はやや独特な考えをしているように感じるとともに、臨床研究を実施するにあたっての被験者保護の国際基準を学習する良い機会になったと考えている。日本の施設がAAHRPPを受審することの意義とその課題を含めて概説する。