【目的】近年、世界同時開発・承認を目指した国際共同治験に基づき承認される新有効成分含有医薬品の数が増えている。有効性・安全性に係る国内外差についての新たな知見が得られているが、データが得られる背景にどのような「構造」を想定して国内外差の分析を行うかについての経験は十分な蓄積がない。企業が実施する臨床開発・申請戦略に基づく試験デザインなどの特徴が国内外差に与える影響の大きさも十分に検討されているとは言い難い。本研究では、国際共同治験での有害事象発現率の国内外差にいくつかの分析手法を適用し、どのように提示されるのかを検討した。
【方法】2012-2019年度にかけて日本で承認された新有効成分含有医薬品のうち、承認申請のための国際共同治験の試験デザインの詳細、有害事象の発現状況を日本人・外国人別に収集した。全ての有害事象の発現例数を取得できた試験を分析対象とし、日本人の発現率から外国人の発現率を引いた統合リスク差をメタアナリシスにより推定した。統合リスク差を説明するための回帰分析モデルを複数構築し、モデル間での分析結果の比較を実施した。
【結果・考察】各薬剤を固定効果とした回帰分析モデルにおいて、N分類の薬剤(回帰係数:0.05、<0.05、以下同じ)及びCYP2C18(0.05、<0.1)は日本人の有害事象の発現しやすさと関係した。一方、各薬剤をランダム効果とした回帰分析モデルにおいては、A分類の薬剤(0.02、<0.1)、L分類の薬剤(0.01、<0.05)、抗体製剤(0.01、<0.01)、日本人に対する外国人のAUCの割合(-0.01、<0.01)が有害事象発現の国内外差に関係があった。背景情報を整えることで、有害事象の発現しやすさの要因を導くことができた一方で、回帰分析モデルを変えることで有害事象発現の国内外差に関係がある変数が異なるため、一定の基準を持って議論することが難しいと分かった。
【結論】上咽頭炎や発疹などの有害事象の発現様態に実質的な国内外差があることが分かった。この違いは有害事象発生の想定メカニズム、分析に使用した手法・モデル(選択した変数)に依存して結果に表れた。国内外差を示す上で、企業の戦略的な判断の影響(試験デザインの特徴等)、被験者のサンプリング、評価者(医師等)の国内外差などをどのように・どの程度調整すべきか、調整した結果の差の解釈の仕方に十分注意を払う必要があることが明らかになった。