【目的】日本での小児適応取得を目指した開発は、海外での開発状況を踏まえた成人適用取得との関係(開発・申請の順序・時期、再審査期間の延長)や日本での保険適用における扱いなど、種々の企業戦略的な背景の下で実施される。小児開発促進策等の効果・効率を適切に評価するには、これらの背景を含む「企業の小児適応取得モデル」に基づく実証的なエビデンスを構築する必要である。本研究では、日本での小児適応開発から承認申請に至る企業の選択を分類した上で、それと関係する背景要因(企業・薬剤特性・規制)を探索した。【方法】2007年から2020年に日本で承認された新有効成分医薬品のうち、小児適応取得が可能な(小児患者の存在が報告されている)疾患を適応とする359品目を分析対象とした。開発パターンを、小児試験の実施の有無及び小児適用申請の有無などにより分類し、ロジット回帰分析等により小児適応開発から承認申請に至る経緯と関係する要因を探索した。小児臨床試験の実施状況はCTD等の記載を参考にした。【結果・考察】分析対象の359品目のうち小児適用のみの品目は10品目であった。残りの349品目のうち、小児試験を実施し申請に至ったのは73品目(21%)だった。半数以上の品目(247品目(71%))では成人適応の申請までに小児試験は実施されず、小児適応も申請されなかった。小児試験を実施したにもかかわらず小児適応を申請しなかった品目が29品目(8%)あった。回帰分析の結果、小児試験を実施したにもかかわらず申請しない品目は、外資企業による開発品、全身用抗感染薬(分類J)で多く、開発前に同種同類薬が保険償還リストに入っていることと正の関係にあった(小児試験を実施し申請を行った品目との比較)。小児患者は存在しても小児試験を実施しない品目は、抗悪性腫瘍薬と免疫調節薬(分類L)で多く、小児患者数が少ないこと、小児適応による再審査期間の延長が与えられない状況と正の関係にあった(小児試験を実施し申請を行った品目との比較)。承認された品目を分析対象にするという制約(選択バイアスの可能性)はあるが、本研究によって製薬企業が再審査、保険適用などのローカル条件を踏まえて日本での小児適用取得を考慮している状況が示された。