【目的】2019年3月にキムリア点滴静注が製造販売承認されたことを受け、九州大学病院(以下、当院)でも保険診療にてキムリア点滴静注を使用できるよう準備を開始した。キムリア点滴静注の治験は国内の限られた数施設において実施され、当院でも2015年より受託した。この治験をCRCとしてコーディネートした経験から、患者選定および患者の病状に合わせた細胞採取・調製のタイミング決定、製造枠の確保、輸注スケジュール決定等、複数部署にわたる調整や情報共有が必要であると考えられた。そこで、病院全体で新たな細胞治療を実施するための体制構築を行ったので報告する。
【方法】治験責任医師を中心とした協議により、細胞免疫治療委員会を設置した。委員会メンバーの構成は、対象疾患患者を治療する診療科、ICU、製品製造および管理に関わる部門、治験部門、医療安全管理部門、事務部門の職員とした。委員会は月に1回定期開催し、対象症例の選定やアフェレーシス・輸注スケジュールの決定を主な協議事項とした。患者の病状変化等による緊急案件については、随時書面会議を開催することで協議できることとした。
【結果】2019年12月~2022年6月の間に、成人・小児合わせて58名にキムリア点滴静注の輸注を実施した。細胞採取・調製については、患者の病状を把握する各診療科の医師だけでなく製品製造に関わるスタッフが委員メンバーとして参加することで、適切なタイミングでの実施が可能となり、患者負担を軽減することができた。当院では成人の治験経験しかなかったが、小児分野においても、準備段階から詳細な情報共有を行うことができ、スムーズな治療導入が可能となった。また、キムリア点滴静注を通して構築した体制により、新たに承認されたブレヤンジ静注についても、2022年2月以降、7名の成人に輸注可能となっている。
【結論】細胞免疫治療委員会を設置することで、複数部署が関与する新たな細胞治療を円滑に実施する体制構築が可能であった。現在は血液疾患を対象とする製品が保険診療で使用されているが、今後は血液疾患以外の固形腫瘍へも対象疾患が広がることが考えられ、血液内科医・小児科医以外の治療経験がない医師も治療に関与すると予測される。そのため、細胞免疫治療委員会で安全管理のアルゴリズム作成等を行っていく必要があると考える。