医学研究・臨床試験における研究対象者への倫理的配慮は、研究企画から実施、終了後までの全過程を通して重要である。エマニュエルらは研究倫理の要件として「インフォームド・コンセント」、「候補者を含む被験者の尊重」などの7項目に加え、発展途上国での研究を念頭においた「協働的パートナーシップ」をあげている(Emanuel,2000,2004)。そして本シンポジウムのテーマである患者・市民参画(PPI)は、研究対象者に関連するコミュニティ(地域や患者・家族会など)と継続的に関わり、そのコミュニティが大切にする価値や文化を尊重した上でパートナーとしての責任を分担するべき、という「協働的パートナーシップ」の考え方を具現化した活動といえる(丸, 2020)。
「協働的パートナーシップ」における患者・市民と研究者の関係性を医療倫理の観点から提唱された患者―医療者関係モデル(Emanuel,1992)を参考に検討すると、十分な議論により互いの考えや価値観を進展させていく「協議モデル」が適当であろう。「協議モデル」を成り立たせるためには、患者・市民に対して医学研究・臨床試験に関する基本的な知識を持ち公平で客観的な意見を述べる力を求めるだけでなく、研究者自身が患者・市民の心理を理解し自他尊重のコミュニケーションを取るための知識や技能・態度を身に着けることが肝要である。
近年、患者・市民を対象とした学習機会は増えている一方で、研究者の学習機会は乏しい現状が指摘されている(PPIガイドブック,2019)。被験者保護の観点から倫理的な研究を実施するためには、現役の研究者のみならず将来の医療を担う学生への教育など研究実施側の裾野を広げた人材養成が必須だと考える。現在、演者が医学部・薬学部生を対象として取り組んでいる教育実践例として、難治性疾患の臨床研究参加経験者を対象とした質的研究結果に基づいて作成した教育ビデオを用い、患者・市民心理や研究者との認識の違いに気づき、そのギャップを埋める対応を考える参加型プログラム等がある。
本シンポジウムでは、これまで演者が行ってきた研究対象者心理やインフォームド・コンセント等に関する教育・研究について紹介し、患者・市民と研究者が真のパートナーとしてPPIを推進するための方策についてフロアの皆さんと考えていきたい。