多発性骨髄腫は病初期の治療は良好な効果が得られるもの、徐々に治療の感受性が悪くなり、多くの薬剤に耐性を示す再発・難治状態となる。以前は、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブと免疫調整薬のレナリドミドの2剤に耐性状態になったケースは、double refractory症例とよばれ、その後の予後が不良であると認識されていた。しかし、新規のプロテアソーム阻害剤(イキサゾミブ、カルフィルゾミブ)や、免疫調節薬(ポマリドミド)さらにはモノクロナール抗体として抗CD38抗体(タラツムマブ及びイサツキシマブ)・抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)が導入されて以降、double refractory症例に対する救援療法は改善されてきており、最近では、penta refractory症例(ボルテミブ・レナリドミド・カルフィルゾミブ・ポマリドミド・ダラツムマブの5剤に耐性)に対する治療方法の改善が課題となっている。
近年の免疫細胞療法の進歩は目覚ましく、遺伝子工学の進歩により末梢血のT細胞に、腫瘍細胞に高発現もしくは特異的に発現している分子を標的とするT細胞受容体 (T cell receptor: TCR)やキメラ抗原受容体 (chimeric antigen receptor: CAR)を安定的に組み込むことが可能になった。多発性骨髄腫における免疫細胞療法は、BCMA (B-cell Maturation Antigen)抗原を標的とした治療法が開発されている。BCMAを標的とする治療薬として、抗体薬物複合体 (ADC) 、二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体やキメラ抗原受容体T細胞 (CAR-T) があげられるが、なかでも、CAR-T細胞療法は、B細胞腫瘍におけるCD19-CAR-T細胞療法と同様に、再発・難治例に対する優れた治療効果が発表され、米国では2021年に再発・難治例に対する救援療法として米食品医薬品局(FDA)によって承認され、本邦でも2022年1月にイデカブタジェン ビクルユーセルが承認されている。
CAR-T細胞療法はその優れた治療効果の一方、CAR-T療法に対する難治例もしくは奏効後の再発例に対する治療法は定まっていない。CAR-T療法によりすぐれた奏効効果をしめすものの、大半は1年以降に再発することが報告されており、再発時の骨髄腫細胞の生物学的特性および、CAR-T細胞を支える免疫環境の変化を含めて不明な点が多い。
本発表では、多発性骨髄腫の新規治療として、免疫細胞療法を中心に取り上げ、その作用機序およびその限界も取り上げ、難治性骨髄腫における最善な治療法について考えてみたい。