【目的】本学では治験支援と研究者主導臨床研究の支援部門を分離しており、リスク管理の観点から全ての特定臨床研究課題に対しCRC支援を行っている。CRC一人当たりの担当課題数は平均17件と多く、今年度から医師主導治験の支援も研究者主導臨床研究支援部門で担当することとなったため、限られた人員でいかに効率よく品質維持を図るかが喫緊の課題となった。またCRCの経験値に大きく差があり、支援の質に影響を与えている可能性も否定できない。当センターで把握し得た不適合報告では、「不適切な同意取得」18.7%、「選択・除外基準の不遵守」13.3%と、介入開始前に発生する不適合が多いことから、介入開始前のプロセスに着目し、不適合発生抑止のための支援ツール作成を含む標準業務化に向けた取り組みを行ったので報告する。【方法】介入開始前のプロセスに着目した不適合発生抑止のための支援ツール作成を含む標準業務化に向けた取り組みを振り返るとともに、得られた効果を評価した。【結果・考察】CRCが把握する不適合報告書の内容を精査し、さらに各々の経験を加味して介入前に発生する不適合の原因と対策を検討したところ、適格性確認、同意書の記載確認、説明文書・同意書の版数確認、jRCT公開および管理者許可確認が課題として挙げられた。このうち(1)適格性等に関する共通フォーマットの作成、(2)同意書回収時のチェックリスト作成について優先的に標準化を行った。また従来は一人一人のCRCにゆだねられていたこれらを管理するためのファイルも、全課題で統一のものを作成した。これらツールの作成に際しては、担当以外のCRCが対応せざるを得ない状況下でも漏れなく対応可能な水準を目指した。標準プロセスの運用開始から現在まで、同意取得関連および適格性関連の不適合は0件と不適合の発生を防ぐことができており、CRCの経験に依存せずに研究の品質を向上させる支援の形を構築することができたと考えている。さらに波及効果として、業務の標準化を組織として実施することで、一人一人のメンバーが個々としてではなくチームとしてのCRC支援を意識するようになった点が挙げられた。【結論】不適合報告に基づく発生頻度などに基づき優先順位をつけて、特定臨床研究における介入開始前の業務を標準化した。この取り組みにより、同意取得・適格性に関する不適合抑止に至り、効率化と品質維持・向上を併せて達成することができた。