【目的】臨床研究法が施行され適切な臨床研究の実施が求められている.特に実施医療施設毎に研究の品質に差異が生じやすい多施設共同研究においては研究全体の品質(信頼度)をいかに確保するかが重要である.品質管理の一環としてモニタリングを実施するにあたり限られたリソースを有効活用し効果的かつ効率的に研究全体の品質を確保しうるモニタリングを実施するために研究代表施設のモニター(以下C-CRA(Central-Clinical Research Associate))と各実施医療機関で自施設のモニタリングを実施するモニター(以下L-CRA(Local- Clinical Research Associate))が連携し研究代表医師が研究全体を統一管理できるモニタリング実施体制を構築し良好な支援を実施できたので報告する.【方法】2019年に本学が代表で実施した多施設共同特定臨床研究(7施設)におけるC-CRAとL-CRAが連携して実施したモニタリングを振り返る.【結果・考察】C-CRAは,Risk Based Approach(以下RBA)の手法を取り入れたモニタリング計画,モニタリングチェックシートを作成した.L-CRA配置について各施設に検討してもらうためにモニタリングの方法について説明会を開催した.共同研究機関6施設の内4施設でL-CRAを配置することができた.配置できなかった2施設はC-CRAがモニタリングを担当した.研究開始前にC-CRAとL-CRAの間でモニタリング方法を統一するためのミーティングを開催し品質目標,モニタリング手順,リスクについて情報共有を行った.モニタリング報告書はL-CRAがモニタリング報告書を提出する前にC-CRAが内容を確認する手順とし,3ヶ月毎に定期モニタリングを実施した.L-CRAを配置することで研究開始前の実施体制の確認において施設毎に配慮すべきリスクが特定され予防措置を講じることが可能であった.研究実施中はモニターが研究責任医師と直接コンタクトが取れる状況にあるため有害事象発生時には正確な情報が速やかに研究責任医師及び研究代表医師に報告され,研究代表医師は因果関係等の取扱いを一括して管理することができた.不適合発生時はL-CRAが積極的に関わることにより迅速に再発防止策が講じられ研究代表医師から各機関の研究責任医師に情報共有された.症例報告書に関してはL-CRAが原資料との照合を行いデータの信頼性が確保できた.【結論】多施設共同研究においてC-CRAがL-CRAと情報共有しながらモニタリングを実施することで,研究の質を向上させることができた.