目的:監査の実施の有無について臨床研究法等では「研究責任医師は必要に応じて(中略)監査を実施させなければならない。」とされてきたが、その「必要に応じて」にかかる明確な基準は示されてこなかった。本発表では公表されている基準案や自らが検討に関わった報告書等から、どのような条件で監査を実施するべきかを提案する。
方法:臨床研究法が施行された後に公表された(1)日本QA研究会の報告1)、(2)AMED橋渡し研究戦略的推進プログラム拠点間ネットワーク監査に係る取り組みの報告2)、(3)他いくつかの中核病院の例、を元に検討した。
結果:(1)は企業主導の臨床研究を対象として検討し、監査が不要とは言えない明確な記載はあるが、「リスクを考慮したうえで監査の要否を判断する」として実施するべき明確な基準は示していない。(2)はアカデミアにおける試験を対象とし研究責任医師がどう考えるべきかにポイントを絞って項目ごとに監査の必要性を4段階で明示し監査の要否の判断を容易にしている。(3)では社会的影響などで必要とされているが明確な基準は特に明記されていない。
考察:上記(2)の著者としては明確な基準を提示したつもりである。すなわち法律等で要求されている試験以外では、科学性の担保と被検者保護において監査の必要性が高い一方、試験デザイン等の要因は監査の必要性は低いとし、監査の要否の判断には一定の示唆を与えられていると考えている。
結論:AMED橋渡し研究戦略的推進プログラム拠点間ネットワーク監査に係る取り組みの報告2)によると研究責任医師がどのような条件で監査を実施するべきか明確になっていると思われる。
参考文献
1)臨床研究の監査手順書ガイド [http://jsqa.com/wp/wp-content/uploads/2018/03/03_Audit-procedures-guide_Clinical-research_JSQA-C4B_20180323.pdf (accessed 2022-8-10)]
2)Nakamura K, Saito AM, Ueda K, Ueda K, Yoshihara K, Hiramatsu N, Yoshihara Y, Kusaka Y, UI H. Risk-based Approach to Determine the Need for an audit : In What Situations Should an Audit Be Performed? Jpn J Clin Pharmacol Ther. 2022;53(3): 49-53