【目的】治験への参加は、患者と治験担当医師にとって課題を伴うことがある。治験シミュレーションは、治験の主な課題を事前に理解しその改善を検討することで、将来実施する治験のデザイン及びアウトカムを向上できる取り組みである。本研究の目的は、(1)掌蹠膿疱症(PPP)患者を対象とする第3相試験のためのシミュレーションから得られた重要な知見とその利点を報告し、将来の治験のデザインと実施手順を最適化すること、(2)他の適応疾患や治療領域の治験にも適用可能な試験デザインの方法について見識を得ること、(3)患者と医師が一緒に、希少かつQOL障害の大きい皮膚疾患の臨床試験の評価に参加することであった。
【方法】PPP患者を対象とした第3相試験に対し、次の3つのステージで構成するシミュレーションを実施した:(i)在宅での課題(治験資料のレビューと患者報告アウトカム質問票への記入など)、(ii)オンラインによる仮想の治験来院(患者と医師の対話など)、(iii)オンラインによる振り返りインタビュー(患者、医師双方に実施)。患者アドバイザリーボード会議をオンラインで開催し、シミュレーションのまとめと結果の解釈を行った。
【結果・考察】日本、米国、欧州から患者9名がステージi~iiiに参加し、患者代表者14名とシミュレーションに協力した医師がアドバイザリーボードに参加した。ステージii~iiiでは、参加者に半構造化面接法による聞き取りを行い、参加者からの質問や提案を受けることができた。参加者の懸念は、プラセボ投与を受けること、使用中の薬を中止することや治験終了後に治験薬の投与を受けられないことであり、患者と医師双方からオープンラベル延長試験を設定することが望まれた。治験薬については、安全性、有効性、臨床上の投与経験が限られていることが治験への参加を検討する上で重要であると指摘された。また、治験実施施設への来院時ならびに治験参加全般にかかる時間を減らすためには、予定されている来院数とその所要時間を再考すべきであることが示された。来院時の移動のサポートや金銭的補償についての提案もなされた。
【結論】以上の見解に基づき、患者と治験担当医師に焦点を当てた改善を行うことで、臨床試験デザイン(PPPのみならず他の適応疾患にも適用可能)を向上させ、治験の参加経験を最適化することが可能であると考える。