【目的】治験における検体処理の条件は多岐にわたる。東大病院臨床研究推進センター臨床試験専用病床部門(P1ユニット)では、エラー防止のため検体処理(遠心・分注・保存)をスタッフの目視によるダブルチェックで行ってきた。しかし、近年夜間の検体処理の必要性や検体数自体の増加のため、検体処理の確認作業を見直し、照合システムを導入することにした。今回、照合システムの導入のプロセスおよび導入後の効果について報告する。【方法】当院検査部で使用しているExcelの照合システムを変更して使用することとした。変更にあたり照合システムの使用が可能な検体処理の工程と導入した場合に照合に必要なチェック項目について検討した。システム導入後の効果として照合システムの試運用期間含め2021年4月から2022年3月まで、その間に行われた4試験を対象に検体処理の作業時間や必要人員数について検証した。【結果】検討の結果、検体処理の工程のうち、エラーが発生する可能性が高く、かつバーコードの使用が可能な分注と保存の工程に照合システムを導入することとした。分注工程においては、同一被験者の検体であるか、検体の種別(検査項目)、分注する本数が一致しているか、また保存工程においては、保存温度帯が正しいかをチェック項目として照合システムに含めることとした。提供された採血管ラベルにバーコードが印字されている場合は、そのバーコードを用いて照合システムを使用できるようにした。その際、試験毎にバーコードの付与ルールが異なるため、Excelの照合システム内に試験毎の変数を設定するという準備作業が必要となった。システム導入後は準備作業として照合システムの変数設定のために1試験あたり約10分の作業時間が増加したが、試験実施の際には照合システムの利用によって2名体制で実施していた検体処理を1名体制で実施することが可能になり、1採血ポイントあたり約10分の作業時間が短縮した。【考察】照合システムを導入することでエラー防止をしつつ業務工数の削減に成功した。しかし提供されたラベルにバーコードが印字されていない場合や遠心作業についてはシステムの導入によるチェック方法が確立できていないため検討が必要である。【結論】検体処理に照合システムを導入することで業務工数の削減に成功した。今後も作業内容やシステムについて検討を行い品質が担保された上での業務の効率化を図っていきたい。