【目的】
広島大学病院(以下、当院)では、SMO(Site Management Organization )2社と業務委託契約を締結し、事務局業務やCRC業務で協働している。その業務の一つとして、依頼者からSMOに照会された新規治験を当院の医師へ紹介する業務(以下、紹介治験業務)があり当院では2019年から開始した。今回、今後の紹介治験業務の運用改善のために諸課題を明らかにすることを目的として、これまでの業務実績および問題点を整理した。
【方法】
当院で企業治験を実施する場合、事務局業務を2社のSMOへ委託している。紹介治験では紹介したSMOが事務局業務を担当し、また、CRC業務を外注する場合、紹介SMOへ受注する場合もある。これらがSMOによる治験紹介のメリットとなっている。当院には依頼者からSMOにしか照会されない治験の実施や治験依頼数の増加というメリットをもたらす。紹介治験の受入れは、以下の手順で行われる。依頼者がSMOへ治験実施可能施設候補の抽出を依頼する。SMOは当院が候補となる治験を院内事務局(以下、事務局)へ照会する。事務局は、調査表を確認し医師への紹介可否を決定する。SMOは紹介可能の場合医師へ紹介し調査を実施し、調査結果を依頼者に報告する。依頼者は各施設の調査内容を検討し、選定調査へ進む場合はSMOが詳細調査を実施し、施設選定面談後に実施可否を決定する。これまでに実施された紹介治験業務の紹介件数、受入件数、受入に至らなかった理由を調査した。
【結果・考察】
2019年1月から2022年5月までの間に照会があった件数は262件で、受け入れが決まった治験は27件であった。事務局は、照会段階でSMO間の照会重複・同疾患の治験実施状況・過去の紹介歴・CRCのリソースを考慮し医師への紹介可否を判断していた。しかし、施設選定面談まで進んで実施不可となり、それまでの過程が関係者の負担になった場合もあった。実施不可の治験を紹介不可と事務局が早めに判断できれば業務負担は軽くなることから、治験内容の詳細な情報提供を求めるなど、SMOと事務局間で事前に照会ルールを作ることが必要と考えられた。
【結論】
紹介治験業務は、治験受け入れに関し施設およびSMO双方にメリットをもたらす。事務局は医療機関の実施体制、診療科の体制等から一定の紹介基準を設け、SMOからの紹介を制御することで業務負担を抑えつつ治験受入れの推進に貢献できる。