【目的】近年、治験を取り巻く環境は日々変化しており、治験薬管理に関しても様々な対応が求められている。治験薬管理は薬剤師の重要な業務であり、山形大学医学部附属病院(以下、当院)では薬剤部長を治験薬管理者とし、臨床研究管理センター(以下、当センター)配属の薬剤師3名が治験薬管理補助者として実務を担っている。治験薬管理業務は多岐にわたるため、管理する側の負担は大きい。そこで、当院での治験薬管理の現状と課題を把握するために調査を行った。【方法】2022年6月時点において当院治験薬保管庫に薬剤が保管されている試験を対象に、治験薬管理業務に関する調査を行った。今回調査対象とした管理業務は、温度管理・搬入受領対応・在庫管理・返却対応業務とした。【結果・考察】該当試験は52試験、88種類、計1490箱の治験薬が保管されていた。温度管理:88種類の内、冷蔵管理(2-8℃)が47%、室温管理(1-30℃)が37%、恒温管理(15-25℃)が15%、冷凍管理(-25℃以下)が1%であり、約半数が冷蔵管理であった。また、ほとんどの試験で最低1日1回は温度計の目視確認が必要であった。搬入受領対応:治験薬受領後は、受領書や搬入時温度記録書など各書類への署名を求められ、それら書類の提出方法も試験によって異なっていた。提出不要が50%、メールでの提出が19%、FAXが13%、郵送が10%、依頼者の直接回収が6%、FAXとメールの両方求める試験も2%あった。受領システム:治験薬を受領時にInteractive Web Response System(WEB登録システム 以下、IWRS)を用いる試験は71%であり、治験薬管理を行う薬剤師もIWRSの登録が求められていた。在庫管理:出納管理上、記録が必須な項目も試験によって様々であり、記録不要が4%、記録1-5項目が2%、6-10項目が56%、11項目以上が38%であった。返却対応:約90%の試験で空容器・空箱の保管を必須としていた。中には使用済み注射シリンジまで保管を求める試験もあり、針刺しや暴露リスクの懸念もあった。今回の調査により、治験薬管理の業務内容の多さと試験による対応のばらつきが把握できた。管理を担う当センター薬剤師はCRC業務も兼務しており、いかに治験薬管理業務の負担を軽減できるかが課題であった。【結論】治験薬管理業務は各試験に対する個別対応が多く、業務が煩雑で作業工程が多かった。今後、安全性を担保しながら治験薬管理業務の統一化や効率化について依頼者と検討が必要である。