【目的】分娩後の水分摂取量の低下や授乳による脱水、分娩進行中もしくは分娩後に食事が不規則になること、貧血への鉄剤の内服、痔の存在など分娩後の女性は便秘をきたす要素が多いとされている。特に帝王切開術後では、帝王切開創部の疼痛への鎮痛剤の投与や硬膜外麻酔の影響があるとされている。また分娩後は急激なホルモンバランスの変化により腸管蠕動が抑制されることがある。帝王切開術を含む外科的手術では、術後に消化管機能が正常に戻るまでに3~4日を要するといわれているが、腹部膨満感が増悪する場合は、腸閉塞の可能性を考慮する必要がある。術後の腸管蠕動促進剤としてパンテノールが用いられることがあるが、帝王切開術後のパンテノールの使用例と未使用例で便通異常改善に対する有効性の差は分かっていない。そこで本研究は、パンテノールの使用の有無と帝王切開術後の排便日数への影響を明らかにすることを目的とした。【方法】2019年4月~2019年9月の期間に当院で帝王切開術を行った患者のうち、便秘薬を使用した患者を対象とし、電子カルテより後方視的に調査を行った。調査項目は年齢、分娩経験、下痢の有無、入院期間、術後排便までの日数とした。なお本研究は,香川大学医学部倫理委員会の承認を得て行った。【結果・考察】対象となった患者は52名であった。パンテノール(+)群では術後排便までの日数が2±0.7日で、パンテノール(-)群では3±0.9日となり、有意な差が認められた。(P < 0.05)その他の項目では有意な差は認められなかった。分娩後の便秘は母体のQOLを著しく低下させる。分娩後では出産のストレスから回復する過程で便秘の不快感が強いと、母体の健康に影響を与えるだけでなく、母体の注意力が最も必要とされる時期の新生児の健康へも影響が考えられる。よって分娩後にスムーズな排便を得るために帝王切開術後のパンテノール使用は有用性が高いと考えられた。【結論】帝王切開術後の排便コントロールのためには、術後早期より適切な介入をする必要があると考える。