背景
近年、電子たばこや加熱式たばこは世界的に使用量が増加している。これら製品には、たばこ葉を使用していない、あるいはたばこ葉を燃焼させないという製品特徴があり、これら製品に関する、喫煙に伴う健康へのリスクの低減可能性について関心が高まりつつある。近年、多くの臨床試験において、紙巻たばこからこれら製品への切り替えにより、体内に取り込まれる健康への影響が懸念される物質(健康懸念物質)量の低減が報告されてきている。一方、これら製品のフレーバータイプの違いが曝露量に与える影響に関する研究は多くない。 そこで、本調査では、加熱式たばこを使用した際に、体内に取り込まれる健康懸念物質の量が、紙巻たばこの喫煙と比べてどの程度低減するのか、レギュラータイプ、メンソールタイプを含む、加熱式たばこ製品を用いて調査した。また、たばこ製品使用による曝露が一切ない状態を把握するため、禁煙時についてもベンチマークとして調査した。
方法
試験参加の文書同意が得られた21歳以上65歳未満の健康な成人喫煙者90名のうち、メンソール製品以外を日常的に喫煙している喫煙者60名を、2種の加熱式たばこ(製品A レギュラータイプ、製品B レギュラータイプ)のいずれかの使用へ切り替え、日常的に喫煙している紙巻たばこ喫煙継続、または禁煙の4群に、15名ずつ割り付けた。また、メンソール製品を日常的に喫煙している喫煙者30名を、製品A メンソールタイプ、または日常的に喫煙している紙巻たばこの喫煙継続の2群に15名ずつ割り付けた。 被験者は、5日間に渡り、割り付けられたたばこを使用または禁煙した。その間に採尿・呼気測定を行い、15種の健康懸念物質の曝露量を調査した。
結果
紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えた全ての群において、紙巻たばこの喫煙を継続した群と比較して、測定した健康懸念物質の多く(14-15種)で、曝露量が顕著に低減した。また、健康懸念物質14種において、曝露量が禁煙した群と同様のレベルまで低減した。
結論
本試験結果において、曝露量について、加熱式たばこのフレーバータイプによる大きな違いはないことが確認され、フレーバーのタイプに関わらず、加熱式たばこへの完全な切り替えは、喫煙継続時と比べ、喫煙に伴う健康へのリスクを低減させる可能性があることが示唆された。