【目的】たばこ煙は たばこ葉の燃焼によって発生する成分を含み,炎症反応や酸化ストレス等を通して喫煙に関連する疾患リスクの要因のひとつと考えられている。加熱式たばこは,燃焼を伴わずに 加熱によってエアロゾルを発生するため, たばこ煙に含まれる燃焼に由来する成分が低減されており,喫煙に関連する疾患リスクを低減する可能性がある。本研究では,機械学習を用いたOMICsデータ解析により,加熱式たばこ使用による生体影響を予測することを目的とした。【方法】「健康な成人喫煙者を対象とした5日間入院での加熱式たばこ使用におけるたばこ煙中に含まれる成分への曝露量を評価する試験(UMIN000041539)」の保管検体を使用した。当該試験5日目の喫煙継続群(CC),異なる加熱式たばこ使用者群(HA,HB,HC,HD),あるいは禁煙群(SS)の尿をMetabolome解析に,全血をTranscriptome解析に用いた。公共データとの比較により,紙巻たばこ 喫煙者と禁煙者間差の再現性 が認められる変数を統計学的手法および機械学習的手法により抽出後,特徴量として機械学習させて入力値をCCまたはSSに判別する判別器をそれぞれ作製した。判別器へ上記6群のデータを入力し,CCまたはSSに判別される割合を群別に集計した。【結果】加熱式たばこ使用者のデータを入力した結果,Metabolome判別器についてはいずれの加熱式たばこ使用者も各群における被験者の50%以上がSSに判別され(HA;87%,HB;73%,HC;93%,HD;93%),Transcriptome判別器についてはHAとHDについて,各群における被験者の50%以上がSSに判別された(HA;73%,HB;47%,HC;36%,HD;57%)。それぞれの判別器を構成する特徴量は炎症反応,酸化ストレス等のプロセスに関わるものだった 。【結論】機械学習を用いたOMICsデータ解析によって,5日間の加熱式たばこの 使用により炎症反応,酸化ストレスが喫煙者よりも禁煙者の傾向へ変動する可能性が示された。