改正薬機法では、医療上のニーズが著しく充足されていない「特定用途医薬品」として、小児の用法用量および剤形追加に対する助成や優先審査が行われることとなり、小児製剤が注目されてきた。欧州では新薬における小児薬開発の計画が義務となった2007年の前後10年間で比較すると、新しい小児薬の数は約2倍に増加した。それでも小児の適応外使用の医薬品が約5割を占める。日本では開発義務がなく、約7割が添付文書に小児の用法・用量が記載されておらず、小児製剤まである製品はさらに少ない。小児にとって薬の味や飲みやすさは服薬できるかどうかに関わる重要な要因であるにもかかわらず、小児製剤の研究開発が立ち遅れていることは否めない。
WHOは小児製剤として経口剤が好ましいとしているが、子どもの発達にしたがい服薬できる剤形が変化するため、適切な小児製剤を設計することは難しい。理想的な製剤は、無味無臭で、量が少なく、サイズが小さく、用量調節が可能で、経管チューブを通過しやすい必要がある。一方、国内で頻用されている細粒剤は、日本以外の地域ではあまり使用されておらず、液剤、溶解剤および懸濁剤が一般的である。グローバル開発であれば国や地域によって異なる習慣や嗜好性に合わせた製剤が必要になる。これらのニーズを満たせる現時点での最適解はミニタブレットではないかと考え、その服用性および受容性について小児の摂食嚥下機能の発達から考察し、液剤ならびに細粒剤と比較した臨床試験結果を紹介する。
小児が薬を服薬できない最大の要因は薬剤の苦味である。例えば臨床で頻用されるプレドニゾロンは苦味を有するが、用量調節の必要性から散剤を用いられることが多く、錠剤より苦味が強くなり小児の服薬拒否の大きな要因となっている。それにもかかわらずこれまでプレドニゾロンの苦味を定量的に評価した報告はほとんどない。そこで50名の健康成人を対象として苦味の評価を単盲検官能試験により実施した。その結果、プレドニゾロン飽和水溶液は1 mMキニーネ水溶液と同程度の苦味を示した。一方、散剤は飽和水溶液より一段階低い苦味を示したものの、その感じ方に大きな個人差が認められた。プレドニゾロンのような苦味を有する薬剤の問題が広く認識され、特に小児製剤の開発において苦味の軽減が重要視されるようになることを願っている。