COVID-19臨床試験、治験に関しては本邦では患者数の少なさやあえて治験を実施しない方針などで諸外国に比して立ち遅れ、貢献できていない。このようなパンデミックの時こそ、科学的に治療法の有効性を評価すべきであるのに、質の高い、公的資金による特定臨床研究であれば承認申請に用いることができるとする通知も出たものの、なかなか実現できず中途半端な研究が多くなってしまった。英国ではいち早くデキザメタゾンの有効性を評価したRECOVERY試験を始めトレードオフにより実現性を高めつつ、わかりやすく有効性を示すためのデザインを採用し、COVID-19の治療に大きく貢献している。COVID-19のような感染症での臨床試験はエンドポイントの設定がその株の毒性、医療の状況などに左右され、死亡や人工呼吸器装着など重篤な評価項目での有効性評価が必ずしも実現できないこと、用量設定に十分な時間をかけることなく検証的試験に移行する例があること、2類感染症ということもあって試験の実施環境が平時と全く異なること、したがって医療機関の負担をさらに重くすることなど多くの課題がある。この解決のためにはデザイン、実施体制共にトレードオフが必須である。琉球大学のAROではこれらの課題解決のためにDecentralized Clinical Trialの導入やエンドポイントとしてのPRO設定やその評価のための二重盲検試験の実施など医師主導治験のプロジェクトマネジメントとしていくつかの取り組みを行なっており、議論したい。