アカデミック臨床研究機関(以下ARO)という組織は20年前我が国にはほとんど存在しない中、海外では米国を中心に多くの国々では整備され臨床研究の中心的役割を担っていた。特に米国国立癌センターやDuke大学はAROが整備され臨床研究の分野において世界を牽引する立場であり今もそれは変わりない。
現在、本邦においてもARO等の研究組織が構築されこれに携わる医師や臨床研究専門職(Clinical Reteach Professional)の重要性が認識されるようになった。学会の専門職認定制度も開始され、専門職毎の人材育成を目指した研修などもアカデミアで積極的に実施されている。これによりアカデミアにおいて専門職が育ち医師主導治験などを経験し、企業出身者とアカデミアで育成された人材が協働し臨床研究の推進を担っている状況にある。また本邦におけるAROの特徴としてトランスレーショナルリサーチセンターの機能を併せて持つ場合も少なくなく、橋渡し研究拠点を中心に幅広い人材の育成が求められている。
しかしながら、臨床研究を担う専門職の育成とキャリアパスという点においては、専門職育成のプログラムの確立とその人材の将来にわたるキャリアパスをどのように展望するかということが未解決である。
研究組織の構築においてはその目指すべき目標に基づき4つのステップを経る必要がある。この中で、文書化(標準化)、最適化というのが組織の発展において不可欠なステップである。業務を個人の能力に頼るのではなく、システムに基づいて実施され、その状況が常に最適化されなければならない。これにより継続的な発展が可能とされている。これを達成するために必要なのが個人の育成である。つまり、組織を担う専門職の育成と組織でのキャリアパスが不可欠である。人材としては、予算担当者、システム担当者、ファシリティ担当者なども必要である。本学では医学教育で用いられる教育手法を用いた教育研修プランの策定などによる現場の専門職育成プログラムと、キャリアパスとして規程上、職位を一級から六級まで昇格可能な制度の導入を行なった。これにより、将来本学で新規採用し育成したスタッフが組織の中心を担うことが期待される。一方で、組織をマネジメントするためのマネジャ教育については、構築中である。