抗凝固療法としてワルファリンは人工弁置換術後、心内血栓予防、静脈血栓症、心房細動など以前から多用されるが、遺伝的素因も含めて至適用量の個人差が大きく、食事や併用薬の影響を受ける点で担当医・薬剤師の積極的なフォロー・介入が必要となる。今回ワルファリンのコントロールが急激に悪化・変動しワルファリン投与量の用量設定に苦慮した2例について提示する。<症例1>抗リン脂質症候群で幼少期に深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症を来した既往がある30歳前後の女性。ワルファリン3.5-4.0mg/日で良好に管理されていた。夫が海外へ長期赴任となり、本人も同行を希望し当院の紹介状を持って赴任先に赴いた。数カ月問題無く経過したが、ワルファリンが減量されたタイミングで肺塞栓・静脈血栓症を再発、フォンダパリヌクス皮下注を導入され、会社の配慮、本人の希望で帰国、当院に緊急入院しワルファリン再調整を実施。膠原病悪化として海外で追加されたステロイドの減量と併せ薬物調整中である。<症例2>先天性大動脈弁狭窄症で人工弁置換(小児期のため狭小弁)がなされワルファリン投与、加えて好酸球増多症がありプレドニゾロンを10-15mg/日投与を受けている。以前、ワルファリンコントロール不良により血栓弁を来し血栓溶解を要したことがある。今年に入ってから動悸・倦怠感が出現、頻脈性心房細動が発作的に生じ心不全を来した。精査加療のために入院とし、心房細動のレートコントロール・薬理学的リズム・コントロールを図り、心不全治療薬の追加 ステロイド投与量の調整を行ったが、ワルファリンコントロールは入院中不安定であり投与量が減量され退院となっていた。退院後初回外来ではPT・INRは1.5未満と不良であり、増量して頻回の通院にて調整しようやく安定化した。今後、心房細動アブレーション、大動脈弁(狭小弁)に対する再弁置換について検討中である。今回のワルファリンの管理に苦慮する症例において医師・薬剤師・臨床薬理専門家のチーム連携が有効であった。