医薬品を適正に使用するためには、添付文書における注意喚起や情報提供が重要である。これらの注意喚起や情報提供のために、医薬品の開発段階で実施された臨床薬理試験の成績が活用される。そこで、今回のシンポジウムでは、医薬品の承認審査において、臨床薬理試験成績がどのように活用されるかを紹介し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の認定薬剤師がどのように貢献できるか考えたい。
医薬品の開発段階において実施される臨床薬理試験には、健康成人を対象とした単回・反復投与試験、食事の影響試験、腎機能又は肝機能障害患者を対象とした試験、薬物相互作用試験などがある。さらに、適応疾患を有する患者を対象とした臨床試験において母集団薬物動態(PPK)解析やPK-PD解析が実施される場合もある。新医薬品の承認審査では、これらの試験成績に基づき、医薬品の用法・用量の適切性や、患者の年齢、体重、病態(基礎疾患)、併用薬などの内的・外的要因に応じた用量調節の必要性が検討される。
承認申請時に提出された上述の臨床薬理試験成績を正しく評価するためには、臨床薬理学領域での広範な知識と技術が必要である。また、それらの情報に基づき添付文書の内容を検討することで、医療現場における医薬品の適正使用に貢献できると考える。PMDAは認定薬剤師の研修施設でもあり、職員が業務を通して研鑽を積みながら認定薬剤師の取得を目指すことが可能である。今後、一人でも多くの職員が、臨床薬理学の知識を生かし、認定薬剤師として医薬品の適正使用の推進に貢献することを期待したい。