現在、私は、保険薬局で薬剤師業務を行いながら、富山大学薬学部の特別研究員として研究活動や薬学生の教育を行っている。保険薬局で勤務しているときは、医療用医薬品添付文書を基本として、患者に投与される医薬品が適正に使用されているのか、薬剤師の観点から判断・評価し業務にあたっている。しかし、研究活動では、今以上に患者のベネフィットを向上させ、リスクを低減させる治療法を考案できないか、模索してきた。現在はその一環として、富山県で発症しやすいといわれている冬季うつ病に着目し、そのモデル動物の作製を行っている。この研究を、実際の医療現場の業務にすぐに役に立ちそうにない研究だと思われた方も多いかもしれない。
臨床薬理学研究の目的は、医療のエンドユーザーである患者の治療に貢献することであるのは言うまでもないが、実際の医療現場での業務と研究内容に関連性は必ずしも必要でないと考えている。要は、医療現場での業務と研究という異なるアプローチの方法をもつことで、医薬品の適正使用や薬物療法について多面的な視点を持つことができ、それぞれ単独では及ばない発想に展開していける点が最大の魅力だと考えている。今回のシンポジウムでは、「研究思考」が、日常の医療現場での薬剤師としての業務に、どのような影響を与えたのか、また、認定薬剤師の取得を契機に、どのような変化が生まれたのかについてお話させていただければと思う。