【目的】
カルバペネム系抗菌薬であるイミペネム (IPM) は広い抗菌スペクトルを有するため、抗菌薬治療において重要な役割を果たしている。抗菌薬の有効性を最大限に活用するために薬物動態学 (PK) および 薬力学 (PD) 理論を応用した投与設計に関する研究が盛んに行われている。抗菌薬のPKPDを組み合わせ、数理モデルシミュレーションを実施することで治療目標達成確率 (PTA) が予測可能となる。本研究では、腎機能をPKの共変量としてIPMの血中濃度を算出し、自施設内の最小発育阻止濃度 (MIC) 分布を組み合わせてIPMのPTAを算出した。このシミュレーション結果から実際の臨床効果との相関性をROC曲線で検証した。
【方法】
対象患者は2014年1月から2018年12月の間に医療法人健救会柳澤病院(当院)に入院し、IPMを投与された65歳以上の患者のうち、IPM投与前後の検査値等の情報収集が可能であった344症例を解析の対象とした。統計解析にはR 4.0.5およびLibrary (deSolve) を用いた。腎機能の推定にはCockcroft-Gault式より算出したクレアチニンクリアランス (CLCr) を用いた。PK解析には既報1)の2-コンパートメント点滴静注モデルによるPKパラメータを用いた。また、PD指標であるMICの対象菌は緑膿菌とし、対象期間における当院のMIC分布を使用した。モンテカルロシミュレーションを応用して症例ごとに10000回の血中濃度推移のシミュレーション行い、Time above MICが40%以上を満たす割合をPTA (%) として算出した。
【結果・考察】
CLCrが20 mL/minの場合、PTAの達成確率は1回250 mgを1日3回投与で73.6%、1回250 mgを1日4回投与で77.7%であった。CLCrが60 mL/minの場合、PTAの達成確率は1回250 mgを1日4回投与で70.3%、1回500 mgを1日4回投与で80.1%であった。
【結論】
腎機能低下(CLCr低下)によるIPMのクリアランス低下によって、PTAの達成確率が上昇することが確認された。また、自施設内のMIC分布と組み合わせることで施設独自のPTAが予測できる。IPM過量投与による副作用を防止しつつ、施設における緑膿菌の感受性状況を鑑みた個別化投与が可能になると考えられた。
【参考文献】
1) Yoshizawa K et al., Int J Antimicrob Agents 40(5):427-33.2012