【目的】
早産児の心臓は発達途中のまま出生するため循環器不全に陥り易く、成人期の心不全や虚血性心疾患のリスクも高くなる。我々は、早産が予想される胎児に用いられる母体への出生前グルココルチコイド (GC) 投与は、肺だけでなく心臓の機能を促進することを報告してきた。しかし、心筋構造の発達についてはまだ評価していない。本研究では、筋原線維のタンパク質のアクチンとミオシンの発現に与える影響を評価した。
【方法】
Wistar系妊娠ラットの妊娠17日目及び19日目にデキサメタゾン (DEX) を2日間皮下投与し、麻酔下で帝王切開した早産仔ラット (早産仔群) の心臓組織を摘出した。生後1日、3日、5日ラットを新生仔ラット (新生仔群)とした。心臓組織に発現するアクチンであるalpha smooth muscle actin (α-SMA)、actin alpha cardiac muscle (ACTC) 1と、ミオシン重鎖であるmyosin heavy chain (MYH) 6、MYH7、並びに関連する各種成長因子を評価した。mRNA発現量はリアルタイムRT-RCRで測定した。タンパク質発現は免疫組織化学染色し、Image Jで画像解析により評価した。
【結果・考察】
α-SMAのタンパク質発現は、19日胎仔から生後5日まで徐々に減少した。また、出生前DEX投与で、19日と21日胎仔のα-SMA mRNAとタンパク質発現が減少した。19日胎仔ラットのACTC1は既に高発現しており、GCによる影響はなかった。
出生前GC投与により19日と21日胎仔のTGF-β mRNAも減少傾向を示した。TGF-βは、心臓の発達初期には心房中隔原基の心内膜床が、上皮間葉転換により形成される際に重要な働きをしている。また、心筋細胞をコラーゲン等の線維性細胞外基質との連結に必要であるα-SMAの発現を誘導すると報告されている。TGF-βとα-SMA mRNAは、出生前GC投与においていずれも減少し、正の相関を示した。したがって、α-SMAの減少にはTGF-βが関与している可能性がある。
一方で、MYH6 mRNAは、19日胎仔から生後1日にかけて成長に伴い増加したが、出生前GC投与で、19日胎仔の発現量はさらに増加した。
【結論】
出生前GC投与は、発達初期の構造タンパク質であるα-SMAとそれに関連する因子であるTGF-βを減少させ、成長に伴い増加する構造タンパク質 (MYH6) を増加させ、心臓の構造的な成長に寄与することが示唆された。