【目的】Cisplatin (CDDP)は副作用として不可逆的な腎毒性 (CDDP-induced nephrotoxicity; CIN)を生じ、これは治療コースを重ねることで増悪することが知られている。CIN増悪の予測はCDDP薬物治療において重要であるが、反復投与によるCINに関する知見は限られており、定量的予測法は確立されていない。そこで本研究では、ラットを用いてCDDP反復投与後のCIN増悪を評価し、定量的予測を可能にするモデルの構築を目的とした。【方法】単回投与実験として、ラットにCDDPを投与し (1-7.5 mg/kg)、21日目まで隔日採血を行った。さらに、反復投与実験として、総投与量9 mg/kgと設定して3サイクル実施し、単回投与実験と同様に採血を行った。ただし、各サイクルの投与量は、1-3-5 mg/kg, 3-3-3 mg/kg, または5-3-1 mg/kgの3群とした。CINの指標として、15-21日目の血漿中クレアチニン濃度 (Cr)を用いた。Cr物質収支は0次生成と1次消失を仮定した準生理学的モデルで記述した。CDDPはCrの消失を阻害するため、この阻害係数をdsCKIとし次式で記述した; dsCKI=Π(1-CDDPiγ/(IC50γ+CDDPiγ)); CDDPi, i番目のCDDP投与量; IC50, 50%最大阻害投与量; γ, Hill係数。パラメータの推定は母集団解析にて行った。【結果・考察】CDDP単回投与後、投与量依存的にCr値は上昇した。さらに、CDDP反復投与後のCr値は、いずれの用量群においてもサイクルを経るごとに上昇する傾向が認められた。単回投与実験におけるCr値はdsCKIにより良好に捕捉され、IC50値は6.68 mg/kg、γ値は1.34と推定された。これら推定値を用いて反復投与実験のCr値を予測したところ、実測値との平均絶対誤差及び平均絶対誤差率はいずれも20%以内であったことから、外的妥当性が示された。以上より、CDDP反復投与時のCIN予測に有用なモデルを構築できたと考えられる。【結論】本研究で構築したdose-response modelにより、CDDP反復投与後の任意のCDDP用量・サイクルにおけるCIN予測が可能になると考えられた。CDDPを用いた抗がん治療の最適化への貢献が期待される。