【背景】COVID-19流行下でモニタリング活動が制限される中、人的・物的資源が限られるアカデミアの臨床試験では、参加施設のより主体的な品質管理活動への参画が期待される。一方GCP省令、臨床研究法、倫理指針等遵守すべきルールが複雑化・細分化する中、多忙な臨床業務に並行し、これら規制への対応も迫られる現場では、混乱が生じている。品質目標の達成には、試験運営側と参加施設側の相互理解に基づく効率的な品質管理体制の構築が重要だが、参加施設側に現状どのような課題があり、如何なる整備が必要かは明らかでない。
【目的】研究者主導多施設共同臨床試験におけるRBM(Risk Based Monitoring)の実践を通じ、参加施設の品質管理活動における具体的な作業内容や課題を調査し、参加施設の負担を軽減し、効率化を図るための方策や必要な整備等を明らかにする。
【方法】国立循環器病研究センターが運営する脳卒中急性期対象の2つの多施設共同試験(特定臨床研究、先進医療B)とその参加施設合計29施設(全て非臨床研究中核病院)を対象とした。RBMの実践課程で各試験の品質水準を満たすため、参加施設側が担うべき役割を特定し、参加施設の業務を標準化・効率化する方策を検討した。
【結果・考察】対象試験では、中央データモニタリングと施設モニタリングを組み合わせたRBMを実施する。RBMの各フェーズ(1. 品質目標の設定, 2. リスクの洗い出しと特定, 3. リスク対応策の検討, 4. モニタリング計画策定, 5. 計画に基づくモニタリングの実施, 6. 計画の再評価)のうち、試験準備段階(1-4)において、過去に実施した脳卒中急性期臨床試験の知見を参考に、対象疾患の特殊性にも配慮し、同意取得―盲検化、薬剤管理、必須文書管理、安全性情報の取得・報告等の各領域におけるリスクを同定した。調整機関、研究責任医師、施設実務担当者、研究支援者などの立場から、想定されるリスクへの対応策を検討し、品質管理上参加施設側が担うべき業務を特定した。特定された業務に関して、各担当者の作業プロセスを加えた横断的フローチャート(スイムレーン図)にまとめ、作業の標準化・見える化を行った。
【結論】臨床試験の試験準備時点で品質管理上参加施設に期待される役割を明らかにし、業務効率化を支援するツールを開発した。今後実際の試験運営を通じ、業務フローの有用性、妥当性について更なる検討を行う。