【目的】新規治験を受け入れるに当たり、IRB申請までに治験依頼者(以下、依頼者)から選定不可の連絡を受けることがある。企業治験を実施する施設として、選定不可の原因を改善し選定される施設を目指すことは重要である。そこで、これまでに改善した本院の治験実施体制を精査し、選定不可を回避するための今後の課題を検討したので報告する。
【方法】2014年度から2020年度までの7年間に、依頼者から新規治験の受け入れについて打診があったにもかかわらず、IRB申請までに受け入れが中止となった治験を治験管理システムより抽出し、依頼者と事務局で取り交わしたメールから中止理由を調査、集計した。また、その後中止原因を改善できた治験受入れ・実施体制を事務局職員に聞き取り調査を実施し、今後の課題について検討した。
【結果・考察】調査期間中に受け入れ中止となった治験は56件で、依頼者からの中止の申出は42件、医師側からの中止の申出は10件、不明4件だった。主な理由は、開発中止(12件)、症例数が見込めない(10件、依頼者8件、医師2件)、本院の受け入れ体制によるもの(10件、依頼者6件、医師4件)だった。本院の受け入れ体制によるものには、a.付随する遺伝子研究が受け入れられないため、b.休日夜間の治験実施体制が整っていないため、c.初期費用が依頼者の設定限度額を超過しているため、d.希望するIRB月で申請ができないため という理由が含まれていた。aは、当時のIRBでは当該薬物とは直接関係しない(旧分類C)遺伝子研究は受け入れ不可という基準で審査していたが、IRBとして受け入れられる条件を協議し、その条件を満たした場合受け入れ可能という審査基準に変更した。cは、変動費の支払いが治験薬投与開始日の一括払いであることが原因であり、マイルストーン制度を導入し分割払いとし、初期費用の引下げが可能となるよう改善した。dは、事務局員を増員し1回のIRBで審査可能な新規治験件数を増加させた。これらの改善以降、付随する遺伝子研究、初期費用、IRB申請月が理由による選定不可を経験していない。bの改善については、CRCや薬剤師の休日夜間の対応や検査部門の休日夜間の検査の実施など、依頼者や治験担当医師の希望に沿った関連部門の受入体制を整備する必要があると考える。
【結論】選定不可理由を精査し治験実施体制を改善していくことは重要であり、治験の受け入れ数の増加につながることが期待される。