【目的】ICH-E6(R2)の 対応に際して必要となるQuality Management System (QMS) は、Risk Based Approach (RBA)を用いることが明記されている。浜松医科大学医学部附属病院・臨床研究センターでは、QMSに関わる文書整備(2020年本学会学術総会報告)に引き続き、実施体制整備を推進している。今回、CRC業務へのRBA導入を目的とした逸脱管理体制を検討したので報告する。
【方法】逸脱(インシデントを含む)を「治験薬・検査手順・欠測・併用薬・その他」に分類し、事例ごとに再発防止策を入力して一元管理する「逸脱管理データベース」を作成した。このデータベースを用いて過去2年間に発生した逸脱を調査し、現状の把握と見直しを行った。さらにCRCによる逸脱/再発防止管理チーム(以下、管理チーム)を作り、その活動を検討した。
【結果・考察】2019年度からの2年間では重大な逸脱はないものの、類似した軽微な逸脱が再発していた。また、再発防止策が十分に共有されていなかった。そこで、逸脱管理手順書に「再発防止策は、全CRCから提案や経験による助言を得ることが望ましい」および「主担当CRCが逸脱内容と再発防止策を逸脱管理データベースに入力する」の手順を追加した。管理チームは業務経験の異なる4名のCRCで構成し、バックアップを含めたデータベース担当者を決めた。管理チームのメンバーは毎年2名ずつ交代し、全CRCが逸脱管理やPDCAサイクルの構築に携わるようにした。管理チームの活動内容は、データベースの管理、定期的なリスク評価と報告、新規のシステムや機器が導入された際にリスクを予測したマニュアル作成や手順書改訂を治験部全体に働きかけること(例えば、電子版・同意説明文書での治験説明や同意取得時のリスクを予見した手順を定める等)とした。実際に活動し、データベース管理や治験部全体への情報の周知・共有は日常業務内での実施が可能であったが、リスク評価については、逸脱が試験結果や被験者に及ぼす影響の程度(軽度/中等度/重度)を判断する基準や指標がないことから、評価方法の標準化が必要と考えられた。
【結論】逸脱管理データベースの作成および逸脱/再発防止管理チームの創設はRBAに基づくQMSの実践に有用である。今後は、リスクの評価基準の策定が必要である。