【目的】抗体-薬物複合体[Antibody-Drug Conjugates(ADC)]は,バイオ医薬品(抗体)と化学合成品(薬物及びリンカー)両方の特性を有するため,承認申請時の評価ポイントは多岐にわたる。そこで本研究では,本邦で承認されたADCについて,主に薬効薬理試験や毒性試験の内容を調査するとともに,得られた知見を臨床試験の立案にどのように繋げいるか検討することを目的とした。
【方法】2021年3月までに本邦で新有効成分含有医薬品として承認されたADC8品目の審査報告書及び申請資料概要を調査し,非臨床試験に用いられた被験物質,動物種,投与量等について整理するとともに臨床試験の投与量との関係等を調査した。
【結果・考察】すべての品目でADCを用いてIn vitro及びIn vivoにおける腫瘍増殖抑制効果が検討されており、5/8品目で標的抗原陽性細胞のみならず陰性細胞を用いて効果を比較し、陽性細胞のみで効果があることを確認していた。臨床試験は、セツキシマブ サロタロカン及びポラツズマブ ベドチンを除き標的抗原陽性の患者を対象に実施されていた。また、トラスツズマブ エムタンシンのIn vitro試験では、抗原陽性トラスツズマブ非感受性細胞でも効果を有することが示されており、トラスツズマブ既治療患者を対象とした臨床試験の立案に繋げていた。7/8品目で反復投与毒性試験が実施され、そのうち6品目でラット及びサルが、残りのイブリツモマブ チウキセタンではサルのみが用いられていた。また、セツキシマブ サロタロカンは単回投与毒性試験(ラット及びサル)しか実施されていなかった。FIH試験の初回投与量は、NOAELから設定している品目とサルのHNSTDから設定している品目があった。後者については、ICH S9ガイドラインのQ&Aに記載されている1/6量よりも低用量が設定されている品目が認められた。
【結論】ADCの臨床試験は標的抗原陽性の患者を対象に実施され、抗体部分のみの前治療歴について規定されている品目もあった。FIH試験の初回投与量は、NOAEL及びサルのHNSTDから設定していたが、必ずしもICH S9ガイドラインのQ&Aの用量が設定されているわけではなかった。