臨床研究法は2018年4月1日より施行されたが、法の附則第二条で施行後5年以内に法律の規定に検討を加えることとされている。2021年現在、厚生労働科学審議会臨床研究部会で、臨床研究法および同施行規則等の改正を含めた議論が行われている。臨床研究法はその施行直後から、法の対象のわかりにくさ、責任体制の不明確さ、国際整合性の欠如、手続きの煩雑さ、コストの高さといった問題点が指摘されていた。これらの問題点の影響もあってか、施行後1年間は新規に開始される介入研究の数が激減し、法第一条に謳われた臨床研究の実施を推進するという目的に反しているという研究者の声も多く聞かれた。実施上の問題点についてはJapanese Cancer Trial Network(JCTN)、日本医学界連合、日本臨床試験学会等からも具体的な改善策が提言されていたが、これらをまとめる形で令和2年度の厚生労働特別研究班(堀田班)で論点整理が行われた。堀田班から示された論点は8つであり、すなわち、1)観察研究に関する適用範囲、2)医療機器に関する臨床研究の適用範囲、3)適応外薬に関する特定臨床研究の適応範囲、4)Sponsor概念の導入、5)疾病等報告の範囲、6)実施計画の簡略化とjRCTとの分離、7)利益相反申告手続きの効率化、8)認定臨床研究審査委員会の認定・更新要件の見直し、である。具体的な論点整理の内容は臨床研究部会の資料として厚生労働省ウェブサイトで公開されているが、現在これらの論点整理をもとに法改正、省令改正の議論が行われている。研究者からの不満が大きかった手続き面での煩雑さはかなり解消される方向での議論が進んでいるが、国際整合性の欠如については、解決の方向に向かうかどうか予断を許さない。また、臨床研究法成立時の国会附帯決議にあった、臨床研究法下で実施された臨床試験データを薬事面で利活用するという点についても今後議論が進む見通しであるため、議論の行方に注目したい。