我が国の急速な高齢化に伴い、健康で自立した生活を少しでも長く継続できるよう、健康日本21(二次)でも健康寿命の延伸が設定されている。しかし、多くの自治体の健康づくりや介護予防の施策には健康関心層しか集まらず、実際に必要としている健康無関心層に届いていないという課題がある。
その解決策の一つとして、地域住民が日常生活で利用するドラッグストアで買い物「ついで」、処方薬を受け取る「ついで」に、気軽に健康づくりができる場を提供することと考え、自社の店舗内に管理栄養士が個別に食事・運動の支援を行う会員制「スマイルクラブ」を設置した。店舗内で健康相談会や健康測定会などを行い、測定値の不良な方へのクラブ入会の誘導ならびに医師や薬剤師からの紹介などで、スマイルクラブの利用者は10年間で延べ約5000名にのぼった。入会目的は主にダイエット、筋力アップ、生活習慣病予防・改善などである。例えば、会員の中には検査値が糖尿病や高血圧の境界で、主治医からこのままでは薬物治療に移行する旨を告げられ、入会した例もある。管理栄養士による臨床薬理的な取り組みを加味しながらの食事・運動の支援で会員の体組成や体力の改善が見られ、薬物治療にいたらなかったケースも見られる。
一方、スマイルクラブの利用者の約60%は65歳以上の高齢者であり、健康寿命の延伸の観点から、サルコぺニアやフレイルの予防にも活動を展開している。会員の7年間のデータを解析した結果、サルコペニアの会員は体組成・体力の改善がみられ、食事・運動支援が有用であった。また、フレイル予防に対しては、は早期に検知し、「体力・社会性・栄養」に着目した対策で要支援・要介護認定者数の減少が期待できる。店舗内で65歳以上の来店者に対し簡易フレイルチェックを実施した。その後、フレイルのリスクがある高齢者に対し、管理栄養士の体操および脳トレの支援並びに食事会を組み合わせた教室を週1回行い、自宅での運動や脳トレのホームワークコンテンツを展開した。その結果、新たな友人関係や交流を促し、フレイルのリスクの改善、自助・互助の意識や社会性を確保できることが確認できた。
今後も、地域住民の買い物「ついで」、処方薬を受け取る「ついで」に、普段着で気軽に立ち寄れる場所での機会を一つでも増やし、臨床薬理的な取り組みにより、健康無関心層の健康や介護予防に貢献していきたい。