私は1998年の東北大学医学部教授に就任以来、臨床薬理学会への参加を通して、薬理学教授の立場から東北大学における治験・臨床研究の基盤整備に尽力してきた。1998年当時は新GCPの施行により治験が日本国内で停滞していた時期でもあり、幾つかの大学を見学して東北大学病院に治験センターを設立した。薬剤師、看護師、病院事務などの多職種の方との連携により、東北大学病院における治験関連制度の確立し、現在に至っている。私の設立した治験センターは東北大学病院臨床研究推進センターとして発展している。
 10年ほど治験センター・副センター長の職にある時に倫理委員会委員長として臨床研究の制度設計に関与することになり、臨床研究倫理審査システムや利益相反管理体制の構築に関与してきた。この中で事務職員との密接な協力と連携の重要性を実感している。2007-2008年に「厚生労働科学研究における利益相反に関する検討委員会」や「臨床研究の倫理指針に関する専門委員会」に参画できた。
 米国大学の利益相反の取組み状況を東北大学として調査したことがあり、ハーバード大学、ジョンスホプキンス大学、ペンシルベニア大学、スタンフォード大学、オレゴン健康科学大学、マサチューセッツ総合病院、AAMC、NIH、OHRPなども見学した。米国では多職種連携による組織運営が一般的であり、特に驚いたのが法務修士号JDを持つ専門職が学長、学部長室において実務を担当していた。日本では多職種連携によるリスクマネジメント人材の確保・育成・処遇が十分ではないと思っている。
 私の個人史の集大成として臨床薬理学会での多職種の意見交換は重要である。医師の立場から多職種連携による臨床薬理学の重要性を認識し、さらに国際化の中で国際的情報共有ネットワークが必要である。