薬物療法は医師の仕事の内容のかなりの部分を占める医療行為であるが、実は医師が臨床薬理について体系的に学ぶ機会は少ない。例えば厚生労働省が定める初期研修医向けの臨床研修の到達目標には「薬物の作用、副作用、相互作用について理解し、薬物治療(抗菌薬、副腎皮質ステロイド薬、解熱薬、麻薬、血液製剤を含む。)ができる。」と記載されているが、多くの場合は先輩医師から口伝として処方の仕方を学ぶにとどまっていることが多く、薬物動態学、薬力学を含む臨床薬理を深く学んでいるとは言い難い。また、演者は小児科専門医であるが、小児科専門医の教育目標には臨床薬理に関する項目がない。実際の臨床現場で、様々な背景をもった小児患者に対して薬剤の適切な投与設計については悩むことが多かった。そこで、臨床薬理学、薬物動態学を学ぶために米国に留学したが、そこでの様々な経験を通して、日本における医師に対する臨床薬理教育の不足を実感した。医師が臨床薬理について学ぶことは、日々の臨床における薬物療法の質の向上や、薬剤師の先生方との「共通言語」用いたディカッションの内容の向上、さらには臨床現場のニーズの把握がしやすいというメリットを活かした、臨床に直結するような薬物関連研究の実施ができるようになるなど、様々なメリットがあると考えられる。当日はこれらの内容を通じて、今後臨床薬理に求められることについて皆様と一緒に考えてみたいと考えている。