演者は小児科専門医を取得し,小児血液腫瘍を専門として臨床経験を積んだ後,薬物動態学,薬理遺伝学に関わる研究に従事した.臨床薬理学を勉強する中で,成長発達過程にある小児は個体差が大きく,薬物動態学理論を基にした薬剤の投与量設計は重要であることを実感した.また,小児領域では日常診療で使用している医薬品の多くが適応外使用であり,小児への適応拡大の促進,エビデンスの収集は大きな課題であることを再認識した.その後臨床現場に戻り,臨床薬理学の知識をもとに,より精度の高い診療を行うことを心がけてきたが,薬剤の適応外使用の判断や保険適応外の検査などが障壁となり,実践することに労力を必要とした.症例を提示し,解決策について議論する.1.造血幹細胞移植の前処置に使用するブスルファン(BU)は,症例ごとの体内動態の差が大きいことが報告されている.BUの血中濃度時間曲線下面積(AUC)が高値では肝中心静脈閉塞症などの副作用の、低値は拒絶や再発の可能性が高くなる.そのため,小児血液腫瘍疾患の臨床試験では,BUの試験投与を行い,継時的に血中濃度を測定して算定したAUCに基づいて,BU投与量を調節することが行われてきた.我々はBU投与予定の1歳患児に対し,BUの薬物動態解析に基づいた投与量調節を実践しようとした.しかし,この投与方法は添付文書に記載のないことから適応外使用になる可能性があると指摘を受け,院内の規定に沿って臨床倫理委員会,未承認薬検討会議に申請した.2.9歳男児 急性リンパ性白血病に対し6-メルカプトプリン(6-MP)とメソトレキセートによる維持療法を行っていた.内服開始5か月目より白血球減少を認めなくなったことから服薬不遵守を疑った.6MPの代謝産物である6-TGN,6MMP濃度を測定することにより不遵守の診断が可能と考えたが,6-TGN,6MMP測定は保険収載されていなかった.保険適応外の検査を行うため,医事課や製薬企業と協議した.3.小児癌の治療には中心静脈カテーテルが必須である。カテーテル内血栓によりカテーテル閉塞に陥った場合,小児血液がん学会のガイドラインでは,カテーテル内ウロキナーゼ充填が推奨されている.しかし,カテーテル閉塞・機能不全に対するウロキナーゼは保険適応がないことを指摘され,院内の規定に沿って,臨床倫理委員会,未承認薬検討会議に申請した.