新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界での感染拡大に対しワクチン開発が急速に進められ、開発から1年を待たずに緊急承認されるワクチンが登場した。特に、今回のワクチン開発においては遺伝子治療技術を用いたウイルスベクターあるいは核酸医薬技術(RNAワクチン・DNAワクチン)を用いた開発が迅速に開始され実用化まで進んだことが大きな特徴である。今回のCOVID-19に対する遺伝子治療技術を用いたワクチン開発において、先行研究での感染症の臨床試験における免疫応答解析など、基盤技術の準備が出来ていたことが大きいと考えられる。ワクチン設計・製剤開発・薬効試験を迅速にスタートし、非臨床試験から初期臨床試験までを一気に完了させ、実証試験である第3相試験で感染予防効果を検証するステージに早期に進む驚異的なスピード開発がなされた。2020年7月に発表されたFDAのCOVID-19ワクチンのガイドラインにおいては、ワクチンの期待される有効性は最低でも50%とされていたが、先行するmRNAワクチンはそれを大きく上回る90%以上の有効性が得られたことは大きな驚きであった。新興感染症に対する迅速ワクチン開発の一つのモデルになると考えられる。我々も同様のコンセプトで迅速DNAワクチンの構築に着手し、新型コロナウイルス感染症に対するDNAワクチン開発の安全性・有効性評価を迅速に行うために、企業と連携しながら、製剤開発、薬効試験、非臨床試験を並行して進め、迅速に臨床試験を開始するための準備を行った。CMCに関しては、DNAワクチンの製剤開発を迅速に行い医薬品としての供給体制を産学連携体制で構築し、スパイク糖蛋白を標的としたDNAワクチンを作成した。並行して、DNAワクチン製剤をラット等に投与して抗体価の上昇を確認し、投与ルートに関しては筋肉内投与および新規デバイスを用いた皮内投与を並行して進めた。また、COVID19感染患者血清を用いた解析も並行して進め、抗体価やウイルス中和活性の測定を行いながら、臨床試験に向けた準備を進めた。本セッションでは我々のアカデミアの立場からの取り組みを紹介し、企業治験および医師主導治験を実際に実施した体験からの課題についても議論できればと思います。